勝手に謝るだけ謝った凱斗は、教室から駆け出してしまった。
昨日のように、凱斗の足音はあっという間に遠ざかっていく。
そしてあたしはやっぱり昨日のように、置き去りにされて凱斗の背中を見つめるだけ。
やがて凱斗の足音も聞こえなくなって、あたしは降りしきる寂しい雨の音にすっぽり包まれた。
ひとりぼっちの薄暗い教室の中で、砕け散ったガラス片と、真っぷたつのミケランジェロと一緒に。
―― ツゥ……ポトッ……
窓の外に振る雨のように、あたしの涙が頬を伝って落ちた。
雨で冷えた気温が肌寒い。
さっきまで凱斗に抱きしめられていたから、余計に寒く感じる。
濡れてしまった昨日よりも、ずっとずっと寒いんだ。
ほら、涙も、昨日よりずっと……。
あたしはグスグスと鼻を啜り上げながら、無心に涙の粒をポタポタ落としていた。


