君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨


 そしてあたしも、凱斗の腕の中から離れることができない。

 まるで魔法にかかったみたいに、ふたりともピクリとも動かない。

 ただ心臓だけが痛いくらいに激しく暴れて、灼けるほどに顔が、体が熱い。

 ひっそりと静まり返った教室で、あたし達の時間だけが、そのまま止まってしまったようだった。

 気が遠くなりそうなくらいドキドキしながら凱斗の胸に顔をうずめて、あたしは心の中で問いかける。

 ねえ凱斗。あたし、わからないよ。

 どうして、こんな風にあたしを抱きしめるの?

 凱斗はあたしを振ったんだよね?

 あたしのこと、好きじゃないんだよ、ね?
 
 疑問。不安。そして……一度は捨てたはずの、かすかな期待が入り乱れる。

 あの日、赤く染まった凱斗の横頬と、あたしを幸せにした凱斗の言葉。

『俺、いつも傘用意してんだ。奏のために』

 あの表情と言葉を思い出すあたしの耳に、ふたりの重なり合う呼吸の音が聞こえた。