普段あまり使われない美術用教材が詰め込まれた準備室は、二階の端の、空き教室が並んでいる棟にある。
生徒達の賑わいから外れた教室に入ると、キャンバスや、イーゼルや、デッサン用の胸像のミケランジェロが出迎えてくれた。
「こんにちは。ミケくん」
胸像のミケランジェロ……通称『ミケくん』は、うちの学校の有名な怪談話の主役。
誰もいない深夜の校舎で、人知れず彼は歌うらしい。
その歌声を聞いた者が、もう何人も不幸な死を遂げている。……らしい。
誰もいない校舎で歌ってるんだから、それを聞いて死ぬ人間もいないはずなんだけど。
という、もっともな理論は横に置いておいて、あたしは教室の主であるミケくんに挨拶して、掃除用具が入ったラックに近づく。
そして扉を開けてホウキを手に取った時、いきなり教室の扉がガラリと開く音がした。
びっくりして振り向いたあたしは、さらにビックリして息を飲む。
「か、凱斗!?」
「向坂? なんでここに?」


