「今日も雨、降ってきそうだね」
亜里沙が窓の方を見ながら言った。
窓ガラスの向こうの空が濃い灰色にくすんで、今にも泣き出しそうに見える。
あたしは無意識にボソッとつぶやいていた。
「雨って嫌い……」
「そう? 奏ったら最近、必死に雨乞いしてたじゃない? 雨が好きなんだとばかり思ってたけど」
「大嫌いだよ。日照り祈願して踊り狂いたいほど嫌い」
昨日までは、あんなに雨が降るのが待ち遠しかったのに。
今日のあたしは、もう永遠に雨なんか降るなと願ってる。
凱斗の存在も、雨も、昨日の幸せが一転して今日の不幸に変わってしまった。人生って諸行無常だ……。
凱斗のことを思うたび、切なさと痛みがズキズキ胸を覆って、やりきれない。
それでもやっぱり、無意識に凱斗を思うことをやめられない。
まるで自分で自分をイジメてるみたいだ。
結局ずーっと気分が晴れないままに午後の授業も終了して、清掃開始の放送が流れ始める。
教室の当番の子たちが、机とイスをガタガタと運び始めた。


