君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨


 凱斗は目を伏せながら、苦しそうな顔でもう一度、同じ言葉を繰り返した。

「ごめん、向坂。ごめん」
「…………」

 あたしはポカーンとしたまま突っ立っている。

 だってまさか、この状況で凱斗に謝罪されるなんて夢にも思っていなかったから。

 なにを謝られているのかもわからず、意味がわかんなくて、どうすればいいのか分かんなくて。

 なにがなにやら、まったく対応できない。

「……ごめんって、なに、が?」

 凱斗の肩越しに、あの日と同じ銀色の糸が見える。

 湿った空気の匂いも、雨に揺れる花壇の花も、耳に響く水の音も、全部同じ。

 なのにあの日とは、凱斗の様子がまるで違って見える。

 凱斗の表情が、絞り出すような声が、本当に本当に辛そうで、嫌な予感しかしないんだ。

 絶対、嫌な答えしか返ってこない。それがわかって、それが不安で、あたし……。

「もう二度と、お前を俺の傘に入れない。それに俺は、お前と一緒にあの校門を通らない」

 すぐそばの自転車置き場の屋根から、雨水がパラパラ……と地面に落ちる音がした。