そんな事をごにょごにょ考えているうちに、凱斗が傘をパッと開いて歩き出してしまった。
うわあぁ! 待って待って凱斗!
あたし、ここにいるんだよ!
「か、凱斗!」
凱斗が振り向き、あたしと目が合った。
少し長めの睫毛に縁取られた彼の両目が大きく見開かれて、そのままあたし達は見つめ合う。
あたしはもう、人形みたいに固まりながら、凱斗の目を見返すだけで精いっぱい。
緊張のあまり顔が真っ赤になって、頬もピクピク引き攣ってしまっている。
だって心臓、口から飛び出そうなんだもん! ドキドキし過ぎて息が苦しい!
ねえ、お願い凱斗。黙ってないで早く何か言ってよ。
『俺と相合傘で帰ろう』って、言ってお願い。
お願い凱斗、凱斗、凱斗、凱斗……。
「……ごめん、向坂」
「……え?」
あたしは目をパチパチさせた。
……なに? ごめん?


