どうするって? その答えは……。
「答えはもう、でているよ。入江さんが可哀そうだから凱斗とあたしは付き合えないなんて、もう言わない」
亜里沙は、お父さんの言葉を待ち続けるって自分で決めた。
たとえこの先一生、自分の望みが叶わなくても、決してそれを誰かのせいにはしないだろう。
あたしももう、やめるよ。
あたしと凱斗の問題を、入江さんのせいにするのはやめる。
誰にもどうにもならなかったことを、やれ自分のせいだの、誰かのせいだの。
そんな理由をこじつけて、一番大事なことから逃げ出して、楽になろうとするのはやめたんだ。
「そっか。……よし、行け! 奏!」
あたしの表情から、あたしの思いのすべてを察してくれた亜里沙が、祝福するように背中を押してくれた。
あたしは凱斗に向かってゆっくり歩み寄り、真正面に立って、彼の顔を見上げる。
サイドを自然に分けた黒髪の、ふわりと緩く遊ぶ前髪。
少し長めな睫毛の、切れ込みの深い二重まぶたの目。
いつも見慣れた、そしてあたしにとって唯一無二の笑顔が目の前にある。
ねえ、凱斗。あたしたちが生きるこの世界って怖いね。
だって呆れるほどの多くの人々が、みんなそれぞれ、その人なりの世界を持って生きている。
無数の世界と世界は、否応なしに関わり合って、絡み合うんだ。


