ついに耐えきれなくなった亜里沙が両手で耳を塞いでしまった。
あたしは亜里沙の肩に手を回し、急いで扉から遠ざけようとする。
もういいよ、行こう亜里沙! こんなの聞く必要ないよ!
―― ガシャーーン!
また、なにかが壊れる大きな音と、おばさんの悲鳴が聞こえた。
亜里沙がハッと顔を上げ、夢中でドアノブに飛びつく。
そして扉を開けようとした瞬間、信じられない言葉が聞こえた。
「あんな子、産まなければよかった!」
「ああ! 産むべきじゃなかったんだよ!」
ビクン!と、雷に打たれたように亜里沙の体が跳ね上がった。
扉を凝視する顔色は、もはや色白を通り越して真っ青だ。
全身は人形のように硬直して、薄く開いた唇がわなないて言葉にならない声を漏らす。
そして、閉じることを忘れたように見開かれた両目から、涙がボタボタと流れ落ちる。
幼い子どもみたいに顔をクシャクシャにした亜里沙は、細い息を吐き出しながら……泣いた。


