「離婚は、しかたない事情なの。あたしはなにも言える立場にないしね」
そんなことを言う亜里沙に、あたしは虫が鳴くような小さな声で答えた。
「そんなわけ、ないじゃん」
自分でも情けないと思うくらい頼りない声だったけど、それでも、頑張って振り絞る。
だって亜里沙がなにも言えない立場だなんて、そんなこと絶対にない。
「だって、亜里沙の大事なお父さんとお母さんのことじゃん」
「お父さんじゃないもの」
「……え?」
「実はあたし、お父さんの子じゃないのよ」
頑張って振り絞った声が、ピタリと止まってしまった。
次々と明かされる事実の波に、もう、ついていくのがやっとだ。
あたしは亜里沙が言った言葉の正確な意味を理解しようと、必死に頭を回転させる。
お父さんの子じゃない?
まさか亜里沙って養子だったの? あ、いや、お母さんの連れ子とか?
「違う違う。そうじゃなくて」
あたしの混乱した表情を読み取ったらしい亜里沙が、パタパタと手を横に振って、言った。
「あたし、お母さんが浮気してできた子どもなの。不倫の結果」
……あたしの中の時間が、一瞬、でも確実に停止した。


