ワンテンポ遅れてから、あたしは目を剥いて悲鳴を上げた。
そんな! 亜里沙引っ越しちゃうの!?
「ど、どこに!? まさか転校しちゃうの!? そんなの絶対ヤダヤダヤダ!」
「しないよ。あたしは引っ越さないもん」
「へ?」
「引っ越すのはお父さんだけ」
「……あ、なんだ、単身赴任なのか」
亜里沙の肩に掴みかかってギャアギャア叫んでいたあたしは、安心してふうっと息を吐いた。
よかったあぁぁ! 亜里沙、転校しちゃうかと思って一瞬血の気が引いた!
そういえば亜里沙のお父さんって、どっかのいい会社のお偉いさんなんだっけ。
あんまり詳しくは知らないけど。
「単身赴任かぁ。それも大変だね。お父さん、寂しいだろうね」
「単身赴任じゃないよ。家を出て行くだけ」
「はあ? だから単身赴任なんでしょ?」
「違うって。うちの両親、別居すんのよ」
「……は?」
「離婚を前提とした、別居。だからお父さんだけが出て行くの。お父さん婿養子だから」
「…………」


