君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨


「とにかく、呆れるぐらい気の毒な話だとは思うけど、その被害をふたりが被ることはないよ」

 腕組みを解き、腰に手を当て、胸を反らして亜里沙は断言する。

「好き合ってる者同士が付き合うのは、自然の摂理なの」

「自然の摂理にばっかりは従ってられないよ。あたしたち野生動物じゃないんだから」

 人間世界はもっと複雑なんだ。

 野生動物だったら、もっと簡単に単純に生きていけるのかもしれないけど。

「人間は別な意味で過酷なんだよ」

「ふうん、それでシッポ巻いて逃げるんだ?」

「…………」

「本当は欲しいものがあるのに、手に入れるのは大変そうだし面倒だから、やっぱりいいや。ってことでしょ?」

 ……ちょっと、ムッとした。

 あたしたちの複雑な思いを、そんな風に判断されて、単純に言い切られてしまうのにはさすがに抵抗がある。

「そういうんじゃないよ」

「じゃあ、誰に邪魔されてるわけでもないのに、付き合わない理由ってなによ?」

「それは、だから説明したじゃん」

「それって負い目? 引け目? 罪悪感? 後ろめたさ?」