「すっぱり割り切りゃいいじゃないの。端数のひとつも出さないくらい小気味よく」
「そんなの無理だって」
「なんでよ? だって引き金引いたのは、あんたたちじゃないんだよ?」
まるで叱り飛ばすような口調で、亜里沙は言葉を続けた。
「あえて原因追及するなら、それは果てしなく無理解な両親の存在と、不幸な事故が原因じゃん?」
「そんな単純じゃないよ」
「単純なの。それをあんたらが無理に複雑化してるだけ」
亜里沙はさも腹立たしそうに、指先で自分の二の腕をトントン叩いている。
そして凱斗に向かって、容赦なく不満をぶつけた。
「こんな結末を期待して、あんたを奏の家に行かせたわけじゃないんだよ? ほんっと究極のダメ男だね」
「悪かったな。ダメ男で」
「前にも言ったけど、あんたマゾ? 自分イジメてそんなに楽しい? この前のあんた、腐りかけのゾンビみたいな顔してたけど、今はもっと始末に負えない顔してる」
「どんな顔だよ」
「まるっきり、悟りの道を開いちゃったゾンビ」
「どんだけありがたいゾンビだよ、それ」


