それを見たら、新しいお母さんは絶対悲しい思いをすると思う。
でもだからって本当のお母さんの写真を、タンスや机の引き出しの奥に、しまい込みたくなかった。
お母さんの思い出を、隠してしまいたくなかった。
でも、言えない。
『本当のお母さんの思い出は、あたしには片付けられない』
そんな言葉、新しいお母さんを傷つけてしまうと思うから。
言えない。言えない。なにもかも言えない。
もしかしたら、もっと早い時期なら、なんとかなっていたのかもしれないけど。
もっと早くに勇気を出していたら、言えたのかもしれないけれど。
でも大人の前で、子どものあたしは、その勇気が持てなかった。
いまさらもう遅い。いまさら言っても……きっと伝わらない。
一番最初に掛け違えてしまったボタンと同じで、こうなったらもう、どうしようもないんだ。
それがわかっているから、あたしは唇をかみしめて、立ち尽くすしかないんだ。


