唇が震えて泣き声が漏れそうになって、歯を食いしばった。
泣いちゃダメだ。結婚式なのに。
幸せな日なのに、泣いたら、あたしが台無しにしちゃう。
そう思って、泣かないように必死に歯を食いしばっているから、なにもしゃべれない。
でもいつまでも口をきかないで、ずっとうつむいているあたしは、大人から見ればふて腐れてるようにしか見えない。
そしたら、今度は誰かが『はぁ……』って溜め息をつく音が聞こえた。
その溜め息が、またナイフみたいに心臓に突き刺さって、痛くて悲しくて……。
もう我慢の限界で、その場からあたしは逃げ出した。
『小花!』ってお父さんの怒鳴り声が聞こえたけど、あたしは止まらずに走り続けた。
そしてお手洗いの中に逃げ込んで、ずっとひとりで泣いていた。
……今日、お父さんの恋人さんが、新しいお母さんになった。
ふたりの邪魔をしちゃいけないから、帰ってきてからあたしはずっと、自分の部屋の中にいる。
そしてひとりで、こうして日記を書いている。
今日からあたしは、新しいお母さんと、家族としてこの家に一緒に住むんだ。


