君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨


 お手洗いから出て、タキシード姿のお父さんと、ウエディングドレス姿の新しいお母さんに、

『あたしは大丈夫だから旅行に行って』

 って言ったら、

『中学生の娘をひとり家に置いて、親が旅行になんて行けるわけないわ』

 って、新しいお母さんに笑顔で言われてしまった。

 そしたら、その話を横で聞いてた親戚の人たちが、

『あら、もう母親としての心構えができてるのね!』

『立派なお母さんね!』

『小花ちゃん、優しいお母さんでよかったねえ!』

 って、すごく盛り上がってしまって。

 それ以上なにも言えない空気になっちゃった……。

 きっとみんな、気を遣ってくれてるんだ。

 新しいお母さんは、こんなに優しい人なんだよ、って。

 こんなに、あなたのためを考えてくれているんだよ、って。

 だからなにも心配することはないんだからね、って。

 ……違うのに。

 あたしは、無理も我慢も、してほしくなんかないのに。

 あたしのためを思うなら、せめて旅行に行ってほしいのに。

 せめてもっと前に、あたしにも相談してほしかったのに。