でもそんなこと言ったら、『口ごたえするな』って怒られるのは、わかってる。
だから外を見るのをやめて、下を見ていたら今度は、
『聞かれたことにちゃんと答えなさい! 無視するんじゃない!』
って叱られた。
無視なんか、してないんだよ……。
答えられないだけなんだよ。
だって聞かれたことに正直に答えたら、それは全部、『別に』とか、『なにも』とか、『まだ全然』とかになっちゃう。
そんなの恋人さん、困るでしょ?
お父さんも、そんなの望んでいないんでしょ?
お父さんが望んでいるのは、聞かれたことにスラスラじょうずに答えるあたしでしょ?
時々、会話の中に明るい笑い声なんかが飛び交って、あたしが褒められたり、感心されるような展開が望みなんでしょう?
恋人さんだって
『まあ、小花ちゃんてスゴイのね! エライのね!』
って、簡単に褒められるような展開がいいんでしょう?
そんな風な、大人が普通に子どもに求めるような、そんなものが欲しいんでしょ?
わかってる。でもそんなの、あたしには無理だから。
だから、なにも言えないの。


