頭……ふらつく。自分の体が地震みたいに揺れてる感じで、気持ち悪い……。

「奏! ムチャしないでよ! あんた体調悪いんだから!」

 胸に手を当ててハアハア息を吐いていたら、背後から亜里沙がバタバタ駆け寄って来る気配がした。

「あ、亜里沙ぁ……」

「大丈夫!? なにか飲み物持ってこようか!?」

「あたし、どうしよう……」

 入江さんは証明した。

 自分の恋を、命をかけて証明した。

 その事実が、幻影のような彼女の世界が、けた外れに大きな影になって目の前に存在している。

 どうすればいい? 唯一、これだけは譲れなかった、あたしの凱斗への確かな気持ち。

 それすらも入江さんの影に、こんなに簡単に砕かれてしまって。

 敵わないよ。とても太刀打ちできない。

 もうここに存在しない者相手に、生きてる者が挑めるわけがない。

 ……ずるい。

 死っていう、とてつもないものを代償にして、これほど大きな衝撃を遺して、手の届かない場所へ勝ち逃げしてしまった入江小花という存在が。