それから亜里沙は少し声のトーンを落として、言葉を続けた。
「……たしかに凱斗の中途半端な優しさは、入江さんにとっては、かえって優しくなかったんだろうとは思うけど」
亜里沙の言いたいこと、あたしにはわかった。
応えられない気持ちを向けられてしまった凱斗。
応えられないとわかっているなら、もっと早く、そう言うべきだったのかもしれない。
でも凱斗は、入江さんを傷つけたくなかったんだ。
そうならないで済むよう、できるだけ穏やかに距離を置こうとした。
その優しさが入江さんを追い詰めたとしても、凱斗にはどうにもできなかった。
だって自分に想いを寄せてくれている相手なら、なおのこと、傷つけたくなんかないじゃないか。
それは凱斗だけじゃなく、誰だって思うことだ。
「凱斗に責任はない。もちろん奏の責任でもない」
「そんなこと、藤森先輩に言われなくてもわかってます」
あたしを傷つけることをまるで恐れていない表情の、中尾さんが言った。
「誰が『責任』があるって言いました? あたしは、ふたりの『せい』だって言ってるんです」


