君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨


 シャララン……と音が聞こえそうなストレートヘアを掻き上げて、亜里沙はまた微笑んだ。

 そして、ぼうっとしている男子の視線を背に受けながら、あたしの元へ戻って来る。

「ほら奏、急いで。一階に戻るよ」

 って促す口調も顔つきも、すっかりいつも通り。

 ま、また一階に戻るの? あのまま待ってればよかった。

 ああ、亜里沙もう行くの? お願いだから少し休もうよ!

 また亜里沙に見捨てられたあたしはひとりで階段を降りて生徒玄関へ向かい、靴箱から革靴を取り出す。

 そして渡り廊下で靴を履き替え、中庭へ出た。

 土と緑の匂いがする中庭は、ケヤキやイチョウの木が庭を囲むように青々と葉を茂らせている。

 少し伸びすぎた枝が空間に翳を作って、夕刻の日陰と混じり合い、さらに周囲を薄暗くしていた。

 風に揺れる枝の下にはブロックで仕切られた花壇が、赤や、白や、紫色の花をたくさん咲かせている。

 その横で、亜里沙が知らない女子と向かい合って立っていた。

 最近雨が多いせいか、花壇の世話をしている人は他に誰もいない。

 じゃあ、あの子が中尾美弥さん? 入江小花さんの親友?

 あのメモ用紙を、あたしの靴に入れた人?

 初めて見るその人の姿を、あたしは少し離れた場所から見つめていた。