その言葉に岡田さんは勢いよくぐるん、と私の方に身体を向け、そしてキスをした。
思ったよりも濃いキスに、一気に頭の中が真っ白になってしまう。

「・・・ふあ・・っ・・んっ・・・!なに・・・?」

「・・・和宏、だろ?苗字で呼んだ罰」

身体から力が抜けてふらついてしまう私を支えるように、私の腰に手を回して抱きしめた。
岡田さんの少し早い鼓動がハッキリと感じられて、私もつられて鼓動が早くなる。

見上げると岡田さんは少し笑っていて、その笑みがとても幸せそうだった。
その顔を見て、私の心の中がほわりと温かくなっていく。

「・・・ねえ、おか・・、いや和宏君」

「なに?」

「少し不安なところはあるけどね、私、和宏君に付いていくことにするよ。・・・一緒にタイに行く」

そう言うと岡田さんは、目を丸くして私を見つめた。

「・・・ほ、本当に・・・?」

「うん。今日課長と話をしてね。お前にはいい経験になるんじゃないかって、一緒に行った方が私の為にもなるって、そう言われたんだ。そしてまた工場には戻れるから行って来いって、そう言われた。本当はあの工場を辞めたくはないけど、でも和宏君と離れるのも嫌。・・・だから知らない国に行くのは怖いけど、和宏君と一緒ならきっと大丈夫だよね?」

岡田さんは無言で頷いていた。
少し泣きそうな、そんな顔で。