課長はそれから「さて、言いたい事も言えたし、休憩するか」と言って部屋を出て行った。
これは休憩じゃなかったのか、とツッコミをいれたくなったが、やっぱり課長は憎めない。
私は泣きはらした顔を作業着の裾で拭うと、また作業へ戻った。



作業をしながら思う。

私はたくさんの愛に包まれて生きている。
それは今まで私が気付かなかっただけで、その中でずっと私は過ごしてきた。

本当にこの工場に戻れるのか、それは分からない。
けれど、今そう思ってくれている気持ちだけで十分幸せだ。

この工場が大好きで、ここの人達が大好きで。
そして、岡田さんが大好きで。

だから、私はどうするのが一番いいのか、もう悩まなくても十分に分かった。

後悔しないように。
そう、自分の気持ちに素直に。


「ありがとう・・・、私の為に」

ぼそりとそう、呟く。
その時の私の心の中は、すがすがしいほどに晴れ渡っていた。