休み明けの仕事は、部品の最終検品だった。
右手が使えないから仕方のない事だと思う。

朝は早めに工場へ来て、いろんな人に謝る。
厳しい言葉を掛けられるのを覚悟していたけれど全くそんな事はなく、むしろみんな気を遣ってくれて、それが余計に心を苦しくさせた。

しん、とした小さな部屋の中で、ひたすら検品を続ける。
右手が使えないから、左手で部品を目の前でくるくると回しながら確認していく。
今までやっていた仕事に比べたら何とも物足りない仕事だけど、この手では研磨の仕事は出来ない。
むしろ片手だけでも出来る仕事があるだけ、ありがたいと思わなければ。

「作業、はかどってるか?」

課長がひょこっと部屋に顔を出し、私にそう言葉を掛けた。
私は作業の手を止めると、課長に身体を向ける。

「お疲れ様です、課長。久しぶりの検品なんで少し勘が鈍ってる感じがしますけど、問題ないです」

「そうか。ゆっくりとやっていいんだからな。あんまり無理するなよ」

そう言うと私の向かいに座り、缶コーヒーを置いた。

仕事中に缶コーヒー?
首を傾げて課長を見ると、課長は少し笑いながら話す。

「休憩しろ、休憩。昼以外休憩しないでずっと部屋にいて検品してただろう?ちゃんと見てるんだ、俺は。ついでだから少し話でもしようか」

課長も持っていたコーヒーのプルタブを開けると、ぐい、と一口飲む。
そう言われて断れるわけもなく、片手で部品をテーブルの端に寄せると、既に開けてくれていたコーヒーを飲んだ。