ぼんやりと考えながら歩いていると、すうっと横に車が横付けし、止まる。
訝しげにその車を見ると、助手席側の窓が開いた。

「家どこ?ついでだから送ってくよ」

乗っていたのはもちろんあの岡田さんだ。
工場で着ていた作業着を脱ぎ、代わりに背広を着ている。
会社に戻るのだろうか?いやはや大変だ。

「すぐそこなんでいいですよ。会社に戻るんでしょう?早く行ったら?」

「基本この工場に来る時は直行直帰なんだ。もう今日は終わりなんだよ。だからそこは気にしなくてもいい。それよりも寒いでしょ?すぐそこでもいいよ、送ってくから乗ってきなよ」

「そうなんですか。でもいいです、気にしないで下さい。夕飯の買い物もしなきゃいけないんで」

そう言い放ち、すたすたと歩き出す。
後ろの方で、バタン、と車のドアの音が聞こえたかと思ったら、いきなり肩を掴まれた。
カチカチ、とハザードランプが暗い夜道を一定に光らせる。

「じゃあ、やっぱりご飯一緒に行こうよ。おごるよ、何でも」

「ちょっと何やってるんですか!行かないし乗りませんから!なんでほとんど話したこともない人とご飯なんか行かなきゃならないんですか!」

「だから話したいんだよ、俺が。真壁さんの事を知りたいんだ」