結局作業が終わったのは定時ギリギリだった。
課長の話通り、少し削るのが難しく手こずってしまったのが原因である。
最後は同じ研磨の先輩も手伝ってくれて、なんとか終わる事が出来たが・・・。

やはりまだまだだな、と自分の未熟さに少しへこんだ。
もっと技術を高めていかないと。正確さとスピードと、どちらも必要な作業だから。

「お疲れ様でしたー」

季節はもう夏が近づいていて、日が暮れてももう寒くはない。むしろ暑いくらいだ。
カブに乗り、微かに香る夏らしい草木の匂いを嗅ぎながら、家へと帰る。

家に着くなり、冷蔵庫に直行して発泡酒の缶を開け、一気に身体に流し込んだ。
アルコールが全身に染みわたった。

旨い。

それしかない。

ようやく落ち着いて、部屋を見渡した。
テレビも付いていないから、時たま通る家の外の車の音が微かに聞こえるだけ。

・・・寂しいな。
岡田さんの声が聞きたいや。

お酒の勢いもあってか携帯を取り出すと、着信履歴から岡田さんを押して、電話を掛けてみる。
発信履歴に岡田さんの名前はない。ぶっちゃけると、自分から掛けるのはこれが初めての事だった。