やがてゆっくりと唇が離れた。
お互い肩で息をしながら、見つめ合う。

「・・・付き合おうよ、里緒奈。後悔はさせないからさ」

畳みかけるように、岡田さんはそう言った。
私はまだ上手く回らない頭で、こう応える。

「まだ、・・・私の気持ちがわからない。もしかしたら好きになり始めているのかもしれないし、でも、もしかしたら今のムードに流されているだけかもしれない。それが、今の私にはわからない・・・それでもいいの?」

岡田さんは笑みを浮かべて頷いた。
そして優しく私の頭を撫でる。

「いいよ。これからどんどん俺の事好きにさせて見せるから」

そして、私を強く抱きしめた。
ほのかに香っていた岡田さんの匂いが強く香る。
思った以上の厚い胸板に、ドキドキしながらも不思議と安心してしまった。

「・・・岡田さんもムードに流されてない?」

「流されてないよ。俺はいつ、この状況に持ち込もうか考えていたけどね。いつまでも先に進めないからさ、もうムードに任せるしかないかなって」

そう言ってまた岡田さんは笑う。

・・・してやられた。
この人、やっぱり何枚も上手だ。

叶わないなぁ。本当に。
少し悔しいけど、・・・でも。

「これから、・・・よろしくお願いします」

「こちらこそ」

そう言うと、また唇が落とされた。
そのキスは、最初のキスよりももっと甘く、そして忘れられないものになった。