「おはよう、真壁さん。一昨日はありがとう」

「おはようございます。大丈夫でしたか?あの後」

「うん、少し遅くなったけど、大きなトラブルに発展せずにすんだよ」

まあ見事な爽やかスマイルであることよ。
工場内の人達は、私達が話をしているのを遠巻きに見ながら、やっぱりニヤニヤしていた。

「そう言えば、ここに来て東雲さんに言われたけど、俺達付き合ってるって事になってるんだって?」

「ああ、それ何回違うって言っても聞かなくて。残念ながらこの工場全体にそう知れ渡っちゃってます」

「そうなの!?・・・そりゃあまたいい事聞いた」

「なんですか、それ。からかわれる身にもなって下さいよ。疲れるったらありゃしない」

「じゃあ、もうこの際だから付き合っちゃえばいいじゃん。そうすれば気にしなくてすむよ?」

「・・・付き合ってなくても気にしない事にしたんで、別にいいです」

つれないなぁなんて言っている岡田さんをよそに、私は軽く礼をすると持ち場へと向かった。

機械の立ち上げをしながらも、顔はずっと赤いままだった。
それを見られたくなくて、早々に岡田さんから離れたのだ。

けれど、どうしても岡田さんが気になってしまう。
作業中も部品の研磨がひとつ終わるたびに、岡田さんを目で探してしまう。

もうなんなの・・・。
変な私。

その不思議な行動は、その日一日ずっと続いた。