「で、ご用件は?」

「え?特にないんだけど。用もないのに掛けちゃダメ?」

「ダメですね。こっちはあつあつのおでんを食べるのを中断して電話に出ているので、用がなければ切りたいです」

「そうかー・・・。じゃあ里緒奈の声が聴きたくて電話したんだけど」

かしゃん、と箸を落とし、耳もとから一気に赤くなる。

またさりげなくこっぱずかしいセリフを言う!
どうしてそうべらべらと言えるんだ、コイツは!

「あはは、動揺したでしょ?可愛い」

「・・・っ!それ要件じゃないでしょう!そう言うの止めて下さい!」

「なんで?」

「なんでって・・・」

そんなもん、恥ずかしいからに決まってんじゃん。
分かっているくせに、意地悪な男だ。

「もう切ります!」

「ごめんごめん、からかい過ぎた。でも、聴きたかったのは本当。里緒奈の声聴けて良かった、元気出た。ちょっと今トラブっててね、少し休憩してたとこなんだ」