うわ、秋元さんにまで知れ渡っている。
って事はこの工場のほとんどがその噂を聞いちゃってるって事じゃないか。
最悪だ、本当に最悪。
これからどうやってここで仕事していけばいいんだ。

「えっとですね、その話は少し違ってまして・・・」

「私があと10歳若かったらモーションかけていたんだけどねぇ、残念だわ。彼まだ20代だもんね、さすがにこの年増じゃ無理よね。仕方ないから譲ってあげるわ、頑張ってね」

譲るって、むしろ譲りたいのですが。
モーションをかけていただきたい。頑張ってと言われても・・・。

秋元さんはそう言うと化粧品のポーチを手に持ち、トイレから出て行った。

じゃああ、と水の流れる音が響く。
すぐ近くの壁には「節水」と書かれた紙が貼られているが、気になど出来なかった。

誤解された状況で、どう仕事していけばいいのか、
それだけがぐるぐると頭の中を駆け巡っていた。