その後、軽く身支度を整えると、岡田さんは私を車に乗せて家まで送ってくれた。

「家教えて。家の前まで送ってくから」

うぬぬ、アパートは教えないつもりだったのに。
ここでもまた先手を打たれた感じになる。

きっと教えなければ車から降ろしてくれないだろう。
仕方なく私は自分のアパートの場所を教えた。

アパートの前に着いた。
降りようとドアに手を掛けたところで、岡田さんが声をかける。

「じゃあ、また今度連絡する。このままどっか遊びに行きたかったけど、昨日たくさん飲んだしね、今日はゆっくり休むといいよ。しつこいようだけど携帯の電源は入れといてね。繋がらないようなら、家に押し掛けるから」

またさりげなく恐ろしい事を言っていやがる。

アパートに来られたら最悪だ。
岡田さんの家を見てしまったから尚更見せる事は出来ない。

なにせ私の部屋は異次元空間だ。
掘り出せばいつのかわからない化石のようなものが発掘されるくらい、散らかっている。
冷めてしまうのは仕方ないにしても、人として軽蔑されるのは嫌だ。

「分かりました。入れておきます」

「良かった。じゃ、またね。来週は水曜日に工場に行くから」

そう言って何故かウインクをすると、颯爽と走り去っていった。

ウインクって、またベタな事を。
本当になんなんだ、あの人は・・・。

と思うのだが、知らずと顔は赤くなっている。
火照る顔を両手で押さえ、自室へと戻った。

部屋の中は、乱雑としている。
自分が片付けないのが悪いのだが、岡田さんの部屋を見てしまった後では、あまりの酷さに肩を落とした。

結局その日は、一日部屋の掃除に明け暮れた。