ここはとある自動車メーカーの部品を作る工場。
主に、エンジン部分の部品を製造している。
メーカーから出された設計図を基に金型から部品を製作し、メーカーの組み立て工場へと出荷する。
いわばメーカーの下請け工場といったところだ。

その工場で働く私、真壁里緒奈(まかべりおな)は昔から車の整備士をしていた父の影響からか機械いじりが好きな変わった女で、工業高校を卒業後、たまたま求人があったこの工場へ就職した。

ここでの担当は、金型から上がった部品のバリを研磨して、滑らかに仕上げる事。
午前午後にある10分間の休憩と昼休憩を除いては、ずっと研磨機の前でひたすら削る毎日だ。

その担当に付くまで約5年。
それまではひたすら部品の目視チェックと出荷を担当していて、現場での作業を希望していた私にとって、ようやく願いが叶った形になる。

口は悪くとも根は優しい、いわゆる職人語りの先輩社員達が、厳しくともかいがいしく教え、そして鍛え上げてくれ、それから2年、ようやく一人でもこの作業を出来るようになったのだった。