課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「誰も見ていない」

「いや、課長が見ています」

「じゃあ、俺も寝転がる。
 安心しろ」

 いや、安心しろってのも変ですが、と雅喜の顔を見たあとで、
「では、失礼して」
と言いざま、ぱたり、と死んだように転がった。

 木目の濃い色の天井が見える。

「わー、気持ちいいですー。
 課長もぜひ」

「だから……」
と言いかけ、雅喜はやめた。

「なんですか?」
と半分起き上がったが、いや、と黙る。

「課長、約束ですよ。
 さあ、寝てください」
と言うと、わかったわかった、と言い、雅喜もテーブルの向こうで寝転がったようだった。

「……天井が見えるな」

「当たり前ですよ」

「よその家で寝転んで、天井見ることってないじゃないか」

「そうですねー」
と笑う。

 なんだか旅先というより、人の家に上がっているような寛ぎ感があるから、そう思うのだろう。

 このまま、目を閉じ、寝てしまいそうだと思った。

 開けた窓から、さわさわと心地よい暖かい風が入ってくる。

 風まで温泉で蒸されて流れてきてるみたいだ、と思った。