課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「まー、でも、そもそも、日本の男の人は、あんまりお姫様抱っこしてくれませんよね?」

 いいとこ、おんぶですよー、と下のフロアの子が言う。

 だから、なんとなく、流れで言っていた。

「え? 課長、お姫様抱っこしてくれるよ」

 沈黙が訪れた。

「えーっ! 嘘っ」
「ほんとですか? 真湖さんっ」

「あの課長がですかっ?」

「あんた、なにしれっと言ってんのよっ」
と礼子が言う。

「ああ、いや、ほら、私が脚立から落ちたときだよ。
 するでしょ、普通、そういうとき」

 しないよー、とみんなが言う。

「なんだ、やっぱり、あのときから出来てたんじゃん」
と言う礼子に、
「出来てませんー。
 今も」
と言う。

「だって、お姫様抱っこするんでしょ?」

「あの人、誰にでもするよ、たぶん。
 その辺に誰かすっ転んでたら。

 若い娘じゃなくても、おばあちゃんでも。

 なんの感慨もなさそうにひょいっと」