「あー! 矢野が沢井さん泣かした!」 「さっそくかよ、この鬼畜!」 「うるせぇてめーら! あとで覚えてろよ!」 「すごんでもムダだぞ矢野。顔がにやけてる」 「矢野くん、千奈を大事にしてよね~!」 「ふたりともお幸せに!」 クラスメイトたちにちゃかされ、矢野くんは「うぜぇ」とうんざりした調子で呟いたけど、繋いだ手をまたそっと握り直してくれた。 それがあまりに優しくて、わたしは泣きながら笑った。