「ホント。やれない女とは付き合えないって。だから私、もう忠志くんが来る集まりには付き合えないから」

「えーうそ。ちょっと待ってよ。勝くんに聞いてみる」

「やめてよ! 余計なこと言わないで」


 思わず出た大きな声に、琴美が体をびくつかせる。



「ご、ごめん。……香苗だってショックだよね」

「まあ。少しはね。でももういいの。放っておいてよ」

「でもさ、香苗美人だから大丈夫だよ。すぐ次の男も出来るって」

「もういいから」


 褒められたってちっとも嬉しくない。気まずい空気を何とかしたいだけの、とってつけみたいな慰めはむしろ気分が悪くなるだけだ。心がこもっているかいないかって、案外伝わるものなんだと実感する。


 琴美と一緒に歩いているのが嫌で、「私先行くから」と告げて走り出した。

(明日美を捜そう。やっぱり昨日のことを説明しなきゃ)

 焦る気持ちを抑えつつ、香苗は校門をくぐった。