白菜、鶏肉、糸こん、シイタケなど鍋の材料に加え、ジュースやお菓子も買い、三人は勝のアパートに向かった。三階建ての茶色い壁のおしゃれなアパートだ。勝の部屋は、二階の角部屋らしい。学生向けの住宅が多いらしく、忠志の住むアパートはここから五分圏内の位置にあるそうだ。


「汚くしてるけど笑わないでね」


 そう言って開けられた扉の向こうには、こじんまりとした部屋があった。室内の奥から順番にベッドと机、少し離れた位置にテレビとパイプハンガーがある。めぼしい家具と言えばそれくらいで、後は雑然とカバンや本が散らばっているという状態だ。

机の前では忠志が勝手知ったる様子でコンロにガスボンベをセットしているところだった。三人を見つけると、さわやかに笑いながら手招きする。


「来た来た、待ってたよ。お、香苗可愛いね」

「そう?」

「うん。なんか今日は大人っぽい」

「ヤダ」

「はは」


 褒められれば、胸は躍る。同級生の男の子に言われても何とも思わないことが、忠志に言われるととても嬉しいのは、やはり恋の効果だ、と思わずにはいられない。


「私、手伝うね」


 女性らしさをアピールすべく、香苗は腕まくりをして忠志の隣に行く。すぐ近くで忠志に微笑まれて、香苗は思わず顔を背けた。


(な、なんか。恥ずかしい)


「あ、そーだ。野菜切らないと!」


 照れ隠しに大声をあげて、小さなキッチンスペースへと向かった。