「勝くん、もうすぐ来るから、そしたら買い出ししようって」

「うん。分かった。忠志くんは?」

「さあ、知らない。香苗が知らないのに、私が知るわけないじゃん?」

「そ、そっか。ごめん、今日来るって話しか聞いてない」

「もう淡白だなぁ」


 呆れたように琴美に言われると、心に薄く影が落ちる。
 

(だって、甘え上手になんてなれないし)


 琴美が勝にするように上手に甘えることができなければ、恋をしていないと言われているようで落ち込んでしまう。
 香苗は頭を振って、自分に言い聞かせた。


(やめよ。答えの出ないことにいつまでも悩んでいても仕方がないじゃない)


 それから、数分後。勝が目尻にしわがよるほどにやにや笑ってやってきた。


「お待たせ、琴美。今日も可愛いな。香苗ちゃんもいいね。忠志喜ぶんじゃない?」

「ありがとう。今日、忠志くんは?」

「今俺の家でコンロの準備とかしてもらってる」

「そっか。じゃあ早く買い出ししていきましょ?」


 並んで歩く勝と琴美の一歩後ろを歩きながら、香苗は胸をなでおろす。 
 心配していた服装は、勝でさえ褒めてくれたのだから、きっと忠志も褒めてくれるだろう。