勝と忠志が連れ立ってやってきたのは、それから五分後だ。ふたりは同じ大学の経済学部に通っていて、ともに地方出身であり、現在一人暮らしをしているアパートが近所だったことからことから仲が良くなったという。

 勝は背が高く、あっさりとした鼻筋が通った顔で、全体的にすっきりした印象がある。今日は紺のボーダーのTシャツにパーカーをはおっていた。
 忠志の方はいわゆるソース顔で、肌の色も浅黒い。身長は勝に負けているが、痩せているからか小さい印象はない。濃紺のシャツに、ジャケットを羽織った姿は、高校生の目からはとても大人っぽく見える。
 どちらがイケメンかと言われれば一般的には忠志の方だろう。


「勝くん!」


 琴美は、先ほどとはうって変わって甘えたような声を出し、勝のもとに駈け出す。


「もう遅いよー。私の事なんかどうでもいいって思ってんでしょう」

「そんなことないよ。ごめんね。ちゃんと埋め合わせするから」


 すり寄られて、デレデレの勝の顔は溶けそうだ。
 ハートマークが飛び交いそうなふたりの姿に、香苗は若干引いてしまう。そして、後ろで静かに立っている忠志の方に近寄った。


「やっほ。忠志くん久しぶり」

「会うの久しぶりだな、香苗。相変わらず可愛いなー。髪切った?」

「切ってない。でもちょっといじってるよ」


 忠志は会うと必ず香苗を褒める。しかも褒めるポイントが香苗的にこだわっているところなのが嬉しくて、彼に会うたび気分が高揚する。

 今まで、同級生の男の子とは付き合ったことがあるけれど、年上と付き合うのは初めてだ。見た目も良ければ、言動もスマート。加えてねちっこくもなく、最高の彼であると言える。