慌てふためく八重と、追い詰めるように携帯を振りかざす俊介。それを見ていた明日美は、思わず吹き出してしまった。


「ぷっ、あはは」

「あ、笑った。なんだよ笑えるんじゃん」

「や、ちょっと見ないで」

「隠されると見たくなる」


 顔の前で広げた両手を、俊介に掴まれる。それだけで、顔に熱が上がってきて、明日美はカチコチに固まってしまった。


(やだ。また顔真っ赤)


 俊介は明日美の態度に一瞬ぎょっとしたものの、すぐに掴んだ手を放し、気を取り直したように笑った。


「ほら、番号交換。我妻も出せよ」

「は、ハイ……」

「お前どんくさいから貸して」


 おずおず差し出したスマホを、俊介は奪い取って勝手に番号登録している。
 それを見つめながら、明日美は穴があったら入りたいような気持ちで縮こまっていた。