瑠璃色の姫君




そんな甘い声で呼ばれた自分の名前、知らない。


知らないのよっ!


呼び捨てで呼ばれるだけでこんなにも恋人らしいように感じるとは思っていなかったのだもの。


なんとかしてジルの腕の中から抜け出そうかと思ったのに、どうも男である彼に力では敵わないらしい。



「あ、あの、まだ言いたいことの続きがありまして」


「んもう! 何よっ!」


「えーと……あ、愛してる」


「えっ!?」



あ、愛してる? 愛してるって!?



初めてちゃんと私への想いを口にしたジルに目が見開かれる。


私のことを好きでいてくれるのは、流れで気がついていたけれど、こうして言われるのは初めて。


その思考時間はものの数秒で、嬉しすぎて無意識のうちに頬がだらしなく緩んだ。


その時、ジルが慌てたように私から手を離し私との間に少し隙間を作った。



「ちょっ、ちょっとお待ちください、バベ、……あ」


「バベ?」



ジルの様子が何か可笑しい。


加えて、ジルの目線は私の背後に向けられている。


そして、極めつけは最後の言葉の『バベ』である。



そこまで続けば次の一音はわからないわけがない。