罵倒してみたところで、ジルの柔らかくどこかデレデレしたように見える表情は変わることはない。
腰に回された手がジルの方に引き寄せられて、額がコツンと重なる。
「……ロゼア様」
「…ふ、2人きりの時は〝様〟は要らないわよ」
ツン、と言う私。
ちょっと、恥ずかしすぎてレティシアみたいになってしまったじゃないの。
もうっ、レティシアのせいよ。
何も悪くないレティシアのせいにするくらいに、恥ずかしすぎて参るお嬢様を見ていると執事の方は余裕が出てきたらしい。
「で、では、お言葉に甘えて」
「え、嘘」
「……よろしい、ですか?」
「い、いいわよ、いいけど、心の準備が……」
ばくばくと大きすぎる音を感じる。
待ってちょうだい、そう言おうとすると、重なったおでこを離したジルが私の耳元に唇を寄せた。
ぼそり、小さな声で、だけど私の耳にはよく届く甘い声が体中を駆け巡った。
ぞくりと軽く身が震えて、思わず手が出た。
「いっ!」
「……っ」
「痛いのですが、……っと、ロ、ロゼア」
バシン、またしても背中を力一杯叩く。
だって、恥ずかしいんだもの。
酷いのだもの。
私、不意打ちは良くないと思うの。


