貞臣は返答に困った様子で言葉を詰まらせた。
「──珠喜」
「はい?」
「僕はそうなる前に、君を身請けするよ。可愛い珠喜を他の男に奪われるのは腹立たしいだろう?」
これは夢だろうか。
それとも現だろうか。
どちらでも構わない。
今、目の前の愛しい人がくれた言葉が真実ならば。
「嘘はつかないでくださいましな」
「嘘じゃないよ。──ただ、仕事の都合でなかなか楼主と掛け合えなくてね」
照れ笑いを浮かべる貞臣に愛しさが込み上げて、珠喜は彼の胸に顔を預けた。
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