教室に戻ったところで、
状況に変化はなかった。
ただクラスメイト全員が各々好きなところに散らばって、ガヤガヤと騒いでいるだけ。
「ねぇ遙、こんな事してても何も変わらないよ…。やっぱり私、ジッとしてると不安」
私は遙を見上げた。
クラスの中で1番頼りになるのは遙だ。
遙は頭もいいし、優しいし、
皆から信頼されている。
恋心を寄せている女子も多いはずだ。
私も、その中の1人なんだけど…。
「あぁ。俺もそう思うけど、どうするって言っても…」
遙が濁した語尾に、
皆の表情が曇る。
それを察した遙が、
ハッと思いついたように声をあげた。
「玄関のガラスを割ろう。そうしたら、外に出れる。助けを呼ぶんだ」
「ナイス遙!俺、投げるもの探してくる!」
野球部のエース、翔太が
教室を飛び出そうと扉を力強くスライドさせた。
が、扉はビクともせずに、
閉ざされたままだった。


