たどり着いた職員室の扉を開けると、
中はしんと静まり返っていて、
人の気配はなかった。
「なに……これ……」
机に置かれたコーヒーが湯気を立てている。
まるで、ついさっきまで誰かが居たかのように。
私は、ハッとしてポケットから携帯を取り出した。
警察に連絡をしよう。
だけど、聞こえたのは一定の速さで鳴り続ける無機質な機械音。
耳から離して画面を見ると、
『圏外』
の表示。
「嘘…なんで……」
今まで1度だって校内で圏外になったことなんてないのに。
「私も圏外だ……」
「俺も……」
クラスメイトたちがケータイ画面を見て呟く。
私のだけじゃなくて、みんなのも……。
一体、どうなっているの…?
私たちは、ひとまず教室へ戻ることにした。
身体中を不安感が襲って、
足取りは重い。
みんなと一緒なら、大丈夫。
私はそれだけを自分に言い聞かせた。


