「綾人、大丈夫か…」


るいがブレザーの袖で綾人の頬を拭った。
健に殴られた右頬は、すっかり痣になっている。


「どうなってんだよッ…」



廊下側にいた唯斗が壁を殴る。

自分の置かれている状況が分からないことがこれほど怖いだなんて、知らなかった。

どこを見ても八方塞がり。
どれが正解なのか分からない選択肢。

それどころか、正解があるのかすら、分からなかった。


「うぅっ…ひぅっ…」


雪菜の泣き声が響く。
誰だって泣きたくもなる。

私だって……。

ぐっと唇を噛み締めた。


扉が開放されたと言っていたけれど、
きっと、教室の扉だけだろう。

もう、期待はしていなかった。

私たちに、なす術などないのだ、と。