「咲良……」
賢ちゃんはあたしの名を静かに呼ぶ。
その声が好きだ。
その顔が好きだ。
賢ちゃんの全部が大好き。
あたしは、大好きな賢ちゃんを見て笑う。
そんなあたしに……
「咲良……結婚するぞ」
やっぱり賢ちゃんは言う。
あんな修羅場があったのに、まだそのネタを使うのか。
軽く笑って流すあたし。
だけど、
「咲良がいいなら、今すぐにでも籍入れよう」
賢ちゃんは馬鹿だ。
「もういい加減、そのネタやめようよ」
耐えきれずそう言うと、
「ネタじゃねぇし!」
拗ねたように顔をゆがめる賢ちゃん。
そして、あたしの手をぎゅっと掴む。