「賢ちゃん……お疲れ様」




苦し紛れに言う。




「咲良……」




賢ちゃんが再びあたしを呼び、間近で視線がぶつかる。



とくん……



胸が甘い音を立てる。

ずるいよ、賢ちゃん。

あんなにかっこよくて、一万人以上のファンを狂わせて、そして、結婚したいなんて言っちゃって。

ずるいずるい!

なんであたしだけ、こんなに夢中になってるの?





だけど……





「咲良……やべーよ。

俺のスティッ……ゔっ!!」




あたしは反射的に、賢ちゃんに頭突きをかましていた。



賢ちゃんの馬鹿!

こんないい時に、いつものお馬鹿発言やめてよ!

ムードぶち壊し!






「痛ってぇ!!

咲良、ひでぇな。

鬼嫁か!!」



「うるさい!

今日の感動、全部無かったことにしてやる!!」



「それなら、もう一回感動させてやる。

違う方法でな!

咲良、俺は容赦しねぇぞ。

今日こそは俺のスティックを……」



「変態!!」