カンボジアに滞在中の潤一から国際電話が掛かって来たのは、その2週間後。
8月20日の夜明けが近い朝方だった。
もちろん眠っていたあたしは鳴り響く着信音に叩き起こされ、寝ぼけながら電話に出たけど、
『おお、出た出た。陽妃、僕です』
その声で一気に目が覚めた。
「潤一!」
そして、潤一の得意技“突然”にやっぱり笑ってしまった。
「どうしたの、電話なんて初めてだね。何かあったの?」
『明後日の午前の便で帰る。でも、バンコクで乗り継ぎするから、成田に着くのは夜になるかな』
どうやら居候させてもらっている知人の家から電話を掛けているらしい。
『お金がかかるから長電話できないんだ』
いつもより早口だった。
でも、それ以外に変わった様子はない。
元気だった。
そして、潤一は、今日20日発売の写真雑誌を買っておいて欲しい、と言った。
「フォトコンテスト? 写真、応募したの?」
『まあね。グランプリは取れなくても、せめて入賞くらいはしてて欲しいんだけどなあ』
「いつの間に?」
『さあ。いつの間にか』
「何それ。テキトーなんだから」
あたしが言うと、電話の向こうから相変わらずのあっけらーとした笑い声が返ってきた。
8月20日の夜明けが近い朝方だった。
もちろん眠っていたあたしは鳴り響く着信音に叩き起こされ、寝ぼけながら電話に出たけど、
『おお、出た出た。陽妃、僕です』
その声で一気に目が覚めた。
「潤一!」
そして、潤一の得意技“突然”にやっぱり笑ってしまった。
「どうしたの、電話なんて初めてだね。何かあったの?」
『明後日の午前の便で帰る。でも、バンコクで乗り継ぎするから、成田に着くのは夜になるかな』
どうやら居候させてもらっている知人の家から電話を掛けているらしい。
『お金がかかるから長電話できないんだ』
いつもより早口だった。
でも、それ以外に変わった様子はない。
元気だった。
そして、潤一は、今日20日発売の写真雑誌を買っておいて欲しい、と言った。
「フォトコンテスト? 写真、応募したの?」
『まあね。グランプリは取れなくても、せめて入賞くらいはしてて欲しいんだけどなあ』
「いつの間に?」
『さあ。いつの間にか』
「何それ。テキトーなんだから」
あたしが言うと、電話の向こうから相変わらずのあっけらーとした笑い声が返ってきた。