昼休みになりお弁当箱を持った花梨があたしの隣にやってきた。


「知世、今日はどうしたの?」


突然そう聞かれ、あたしは「なにが?」と、聞き返す。


「全然明彦と会話してないじゃん。京一郎の所ばっかり行ってさ」


「あぁ。明彦とはもう別れたから」


そう言うと、花梨は「嘘でしょ?」と、目を見開いた。


「本当だよ、昨日別れた」


「どうして? あんなに仲が良かったのに!」


「仲は良かったけど、あたし他に好きな人ができちゃったんだよね」


躊躇することなくそう言うと花梨は視線を京一郎へと向けた。


「まさか、それって……」


「うん。京一郎だよ」


ニコッと笑顔になって返事をすると、花梨は眉を下げた。


「なんで……?」


「なんでって、恋をするにの理由なんていらないでしょ?」


いつでも誰かに憧れている花梨が、よく言っている言葉だ。


恋に落ちるのに理由はいらない。


形がないからこそ大切にして育てていくものだと、頬をピンク色にして言うのだ。


「それは……そうだけど……」


花梨は困ったようにお弁当に視線を向けた。


赤いウインナーがタコさんの形に切られているし、ニンジンが花の形で茹でられている。


花梨の手作りだろうということが、すぐにわかった。