大声でどなってやろうと思ったが、登校途中の生徒も多いためあたしはグッと言葉を飲み込んだ。


自転車はあっという間に視界から消えてしまい、あたしは小さく息を吐き出した。


「平仲さん、大丈夫？」


その声に振り向くと心配そうな顔をした京一郎が立っていて、あたしに手を差し出してくれていた。


一瞬とまどったあたしだが、京一郎の手を握る。


「全く、危ない運転だな」


京一郎はそう言い、自転車が走って行った方向を睨んだ。


「ごめんね、ありがとう」


そう言うと、京一郎は優しくほほ笑んだ。


「お礼なんていらないよ。それより、怪我はない？」


「たぶん、大丈夫」


あたしがそう返事をすると、京一郎は安心したようにあたしの頭をポンッと撫でて来た。


彼女でもないあたしにこんな事をするという事は、この美とはもう別れたのかもしれない。


あたしは京一郎と並んで歩き始めた。


「平仲さんってさ、努力してるってイメージがあるよね」


突然そう言われてあたしは「そうかな？」と、少し焦って返事をした。


せっかくのいい雰囲気を壊さないように、口を滑らせないようにしなければいけない。