「まぁな!
そのうち智沙にもいい相手がみつかるから焦んな焦んな!」
「焦ってないんだけど」
康太の失言に、眉間にしわを寄せる。
それに気づいた静音は、再びあたしたちが揉める前に慌てて話を少しだけそらす。
「で、でも、ちーちゃんに彼氏がいないなんて不思議だよね」
こんなに美人なのに、とあつく語られて力が抜けてしまう。
静音のゼリーを、ひとすくい。
「そんなの決まってるよ。
あたしがビジュアル詐欺師だから……見た目とのギャップが激しいからだよ」
年の離れた姉がいた影響で、子どもの頃から周りの人より少し大人びた感じ雰囲気を纏っていたあたし。
化粧に手を出すのも早かったし、髪だって染めたりパーマをあてたりと好き勝手にしている。
だからみんな、あたしをよく知らない人たちは勘違いをしている。
あたしが見た目のとおり大人っぽく、色っぽく、男女の関係なんかも派手だと。
だけど実際はそんなこと全くない。
今年中学1年生の妹と張り合えるくらい子どもっぽいし、勉強なんてちっともできない。
だから、ビジュアル詐欺師。
中学生の頃から、そんな風に言われていた。
だからもう、あたしは慣れっこだ。
人の抱く印象と実際のあたしの印象の違いに勝手に落胆されようとも、仕方がない。

